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おーぷん2ちゃんねる百物語

おーぷん2ちゃんねる百物語2015 本スレ

第41話『光る虫』 葛◆5fF4aBHyEs
仕事を終えて、仲の良い同僚と連れ立って駐車場に向かう
「お疲れ様ー」「また明日ね」
互いに手を振って車に乗り込もうとした時、ふと動きを止めた
いつの間に現れたのだろう。同僚の周りを小さな光る虫のようなものが飛び交っている
少なくとも、一緒に駐車場まで歩いて来る時には気付かなかった
(何だろう……?)
飛蚊症というか。似ていると言えば似ているのだけれど……
何故か猛烈に嫌な予感がして、思わず同僚を呼び止めていた
「あのっ、そういやさ、こないだ言ってた本、もう買った?」
「まだだけど……」
面食らったように答える同僚が怪訝そうに眉をひそめるが、深く考える暇もなく矢継ぎ早に自分は次の話題を振る
「あ、そういえば、この間もらったお菓子、超おいしかったよ!あれ、どこで買ったの?」
「袋に書いてあったと思うけど……」
「あ、そ、そうなんだ。あ、そういえば、スーパーの特売日っていつだっけ」
「今日だよ?」
同僚は家庭持ちのため、『早く帰って夕飯を作りたい』というのが見え隠れしている。結局5分近く立ち話をした後、
「ごめん、そろそろ帰るね」
と同僚が切り出した
「う、あの、長話してごめん。……でも、気をつけて!気をつけて帰ってね!」
「うん。じゃ、また明日」
駐車場から出る同僚の車を見ながら、何故かそわそわして落ち着かなかった

晩ご飯を食べ終わった頃、同僚から電話が入った
『ちょうど私が通る5分くらい前に事故があって、すごい渋滞に巻き込まれちゃった』
いつもは20分の道のりが、1時間近くかかったという
ごめんね、と謝って電話を切った

結局、あの光る虫が何だったのかは解らない
あれ以降、同僚の周りでも見ていない
第42話『欲』 葛◆5fF4aBHyEs
祖母の姉、つまり大伯母は派手好きな人だった
容姿も、常にブランド物を身につけ、宝塚もかくやという化粧。そのうちラスボスと化してもおかしくない
子供心に「孔雀かよ」とツッコミを入れたくなるほど派手だったし、また金遣いも派手だった
曰く、『引きが強い』のだと言っていた
実際商店街の福引きでは引けば必ず上位に入る、ちょっとしたことでもラッキーを引き当てる
出掛ければ財布を拾って謝礼を貰う。パチンコに行けば元手を10倍にして帰ってくるなんて日常茶飯事だった
でも、祖母やうちの両親……ううん。親戚、近所の人を含め大伯母に関わる人は全て大伯母を敬遠していたように思う
自分も大伯母の事は苦手だった
悪い人では無いと思う。子供の自分でも「コミュニケーションが下手なんだな」と感じる、どこか幼い部分を残した人だった
よくお小遣いをくれたけれど、そのお金は自分の懐に入る前に祖母か母が取り上げ、どこかに持って行っていた
子供だから「あれもほしい、これもほしい」という気持ちはあったので
『お小遣いをくれる大伯母=良い人』『お小遣いを取り上げる祖母や母=嫌い』と思ったりもしたけれど、そういった気持ちは年を重ねるごとに薄れていった
稀に見つからず、お小遣いを取り上げられずに済んだのだが、お小遣いを使った時は必ず不幸な目にあったからだ
五百円貰って自販機でジュースを一本買った時は、自転車と接触事故。千円貰ってコミックを一冊買った時は、突然フェンスが倒れてきて額を切り、2針縫った
五千円貰ってゲームを買った時は、車に跳ねられて足を折った

こうなってくると何となく、「大伯母のお金って良くない物なんじゃないだろうか……」と思ってしまう
手に入れた金額が大きく、使った金額が大きくなれば被害も大きくなる傾向にあるようだ
だとしたら、既に多額のお金を手にし、あちこちで散財している大伯母は、今でこそ無事だけれど、何か良くないことが起きるんじゃないだろうか……そんな予感がした

やがて、大伯母は亡くなった
如何様を疑われての見せしめだとか、どうやってその強運を手に入れたのか聞き出そうとしたに違いないとか言われていたけれど、真相は知らない。知りたくも無い
ただ一つはっきりしているのは、「子供には聞かせられないような惨たらしい亡くなり方をした」という事実だけ
葬儀は身内だけでひっそりと執り行われた
葬儀の最中、突然風も無いのに蝋燭の炎が揺らいで消えたり、かと思えばいきなり「ボッ」と音を立てて火の勢いが強くなったりした
どこからともなく卵が腐ったような臭いが漂ってきたり、突然仏壇の裏から「キョエーッ!!」と奇声が響いてきたり、地震でもないのに棺だけがガタガタガタッと激しく揺れたり
妙な出来事は多かったが、とりあえず何とか葬儀を終える
大伯母は独身で、貯えも沢山あったのだが、誰一人遺産を欲しがろうとしなかった
むしろ誰しもが持て余しているようだった。結局遺産はお寺に納められた

「あんお金はな、邪法で手に入れたものなんよ」
いつだったか、祖母が教えてくれた
やり方は知らないけれど、と前置きして祖母は言う
「直接誰かを傷つけるわけじゃ無くても、非合法なことで無くても、アンタはそんなものに頼ったらいけんよ」
祖母に言われ、頷いた

今も時々、大伯母の寂しそうな顔を思い出す
どんなにお金があっても、決して満たされることの無かった大伯母は今、何を思っているのだろうか……
第43話『祖母の話「狐火」』 葛◆5fF4aBHyEs
「昔々、そこの線路にまだ汽車が通っていた、婆ちゃんが女学生の頃の話だ」
祖母はそう切り出したが、自分が生まれた時にはとっくの昔に線路は廃線になっていたので、「汽車が通っていた」と言われても今一つ想像できなかった
「その時は何でか用事があってナァ、汽車に乗り損のうたんよ。その頃は今みたいに電話も無いでナァ、婆ちゃん、線路を歩いて帰ることにしたんよ」
学校から家までの距離は10キロほどだったらしい。「昔の人は健脚だから」と祖母は笑う。勿論、今はそんなことしちゃなんねぇけど、としっかり釘もさす
「所々にぽつんと外灯があるくらいで、後は真っ暗だ。月と星の明かりだけを頼りに歩いたが、『線路』っち言う『道』がハッキリしとうけん、怖くは無かったな」
そうしてしばらく歩き続けると、ふと前方に明かりが灯ったのだそうだ
「外灯の様に上から照らす明かりじゃのうて、人の胸くらいの高さでな。その明かりがふわり、ふわりと動くわけだ」
人魂かと驚く祖母の前で、明かりは一つ増え、二つ増え、と次第に数を増やしていく
「こりゃあマズい、と思うたが、よくよく見ると明かりは線路の上をゆっくり行ったり来たりしよるけん、もしかしたら、足元を照らしてくれよるのかち思うてな」
怖がってその場に留まっていても仕方がない、騙されたら騙された時、と祖母は腹を括り、再び線路を歩き始めたのだそうだ


「せやけど、行けども行けども家に辿り着くどころか、民家の一軒も見当たらん。こりゃどっかに連れ込まれて迷わされよるのかと思うたんよ」
意を決して線路から逸れ、葦を掻き分けて川に出ると、何故か普段は膝下までしかない水深が、どう見ても人の背以上の深さにしか見えなかったという
「仕方がないけん線路に戻ってまた歩き始めたんやが、今度は明かりの方が線路から逸れとってな」
明かりを頼りに歩いていた祖母は線路から外れたことを奇妙に思ったが、何となく明かりに従って線路を外れたのだそうだ
「そうすっと、向こうから汽車がやって来てナァ……」
危ないところだった。そう思うよりもまず、祖母は汽車が通っていることに驚いた
もう最後の汽車もとっくに終わっている。かといって、貨物車でも無い
驚く祖母の前を、汽車が通り抜ける
「……乗っとったんは皆、兵隊さんでナァ……皆同じような青白い顔で、ジィっとこっちを見とった」
汽車が通り過ぎてから、また誘うように明かりが線路の上に灯る
それに沿って歩いていると、すぐに家の前に出たのだという
「気が付くと明かりは消えとった。婆ちゃんの爺ちゃんに話したら、『そりゃきっと御狐様が助けてくれはったんやろう』ち言うてな」
翌日、近所の稲荷神社にお参りに行ってきたのだそうだ


もう既に廃線になって久しい線路だが、祖母はたまに「今でも夜中に汽車の音がする」と言っていた
あの線路には、今でも兵隊さんを乗せた汽車が走っているのかもしれない
第44話『伝説スポット突撃談』 たるたる◆t9nOsDb75I
うちの地元の山にはややオカルトめいた伝説がある
この山の頂上に池があるのだが、五百年前にこの地方を支配していた武将が敵に攻め込まれて逃げられず
馬とともにこの池に飛び込んで死んでしまったといわれる
以来、毎年大晦日の晩になると、この池に、馬の鞍だけがプカリと浮くという話だ
自分はこの話を確かめようと4?5年前の大晦日の晩にこの池に突撃した
大晦日の夜に山登り、どう考えてもバカである、山道はよく釣りにいくので懐中電灯だけで進める

頂上に到着、11時、寒い、雪まで降ってきた

さて懐中電灯の明かりで池の表面を照らす・・・草がはえてるのみ
11時に頂上について12時になった、さすがに飽きてきて、もう降りようかと思いはじめた頃に池の向こうから何かの音がした
ドンドンドンドンドンドン と響くような音、明かりを向けたが何も見えない
音は断続的に辺りに響き、そのたびに自分はだんだん恐ろしくなってきた
懐中電灯の電池を入れ替えて周りを照らしたら、池の上にポツンと赤い玉のような物が見えた
すわ、人魂か?
しかし、それは動きも揺めきもしない
ドンドンドンドンドンドンと音がまた響く

ここにいたって急に強い恐怖を感じた自分は、赤い玉から目をそらし、そそくさと下山した

後にあの山のことを親に聞いたら、あの山は昔は「歳徳神(としとくじん)」の出る山だと言われていた、という
歳徳神がなんだか親にきいてもわからなかったが、ただ大晦日に出現するという
あの赤い玉のような物がそうだったのか?

しかし自分はもう確認に行く気はしない
あれを見る事自体が非常に良くない事のような気がするから
第45話『「ばいばい」』 雷鳥一号◆jgxp0RiZOM
知り合いの話。

彼女の家は、墓地のすぐ横にある。
まだ幼い長男が、いつも決まった場所に「ばいばい」と手を振るのだそうだ。
誰もいない墓所の中に向かって。

先日、友人が同い年の子を連れ遊びに来たのだが、やはりその子もそこに向けて
「ばいばい」と手を振っていたという。

「どうにも気持ち悪いけど、別にそれ以上怖い思いはしていないんだよね」
そう言って彼女は顔を顰めていた。

第46話『バレンタインの復讐』 宵待草◆zGmkUMDv/mqt
閑話休題。看護師の友達から聞いた話。

医者のA先生は若くてスポーツもできてハンサムで。
当然もてていろんな女性と付き合っていたらしい。

ある日、女医のB子先生と結婚が決まったと聞いた時は皆驚いた。
なぜなら直前まで同じ女医のC美先生と付き合っていたから。
その上、B子先生が妊娠しているというのだ。
結婚式はお腹が目立たないうちにと2月になってしまって。
表向きはバレンタイン婚だとお祝いされてたけど、何か起きそうだと周りは思っていた。

案の上、結婚式も終わってうかれてたA先生が病院で電子カルテを開いてみると
まっしろ…というか、なんと予約が全部キャンセルになっていたらしい。
手術室の予約も…全部。

A先生がログアウトし忘れたIDを使って誰かが消したというのだ。
結局犯人はわからなかったけど、皆C美先生がやったと思っているそうだ。

幽霊よりも生きている人間の方が怖いというお話
第47話『原因不明の雲隠れ』 川瀬◆8DcQWhttmU
大学3年の時のこと、当時 剣道をやっており、毎日朝練があった
部室はグラウンドの向かい側にあり、朝、事務所で部室のカギを受け取って開けていた。
ところがその日はなぜか全員がカギを取ってくるのを忘れて、部室の前で立ち往生した
先輩の一人が一年のAに事務所までカギを取ってこさせた。
しかし5分たっても10分たってもAが戻ってこない
事務所は部室から見てグラウンドの反対側にあって距離があるのだが、それにしても
遅過ぎである
痺れを切らした先輩が別の一年部員Bに事務所へ行かせた。
Bはしばらくして戻ってきて、事務所にあったカギはAが持って行ったこと、Aが来たのは
10分ほど前だったこと、を伝えた。
要するに、Aは事務所までは普通に着いたが、カギをを受け取ったあと行方不明なわけだ
Aは性格が真面目で先輩たちにも好かれていたし、突然いたずらをするとは思えない

とにかく、Aがカギを持ったままいなくなったので部室のドアは誰にも開けられず、
やがて主将以下全員揃ったが、部室に入れないので部室前にたむろするしかない
そのうえ雨まで降ってくるという最悪の状態になった
結局、全員で手分けしてAを探し、30分くらいしてAは見つかった
しかし、怒り心頭だったはずの先輩らはAに変にやさしく、他の者にも、今回の事
は許してやれ、理由は聞くな、と妙にAをかばった。
Aに何があったのか、訊くタイミングを逸したまま自分はもう卒業したが
非常に不思議だったし、先輩の態度ともどもいつか訊けたら訊いてみたいと思っている。
第48話『街灯にまつわる話』 薄荷柚子◆CYOadRFefE
私の実家は堤防沿いにある。家の北側は堤防と川しかない。
夜になれば真っ暗なのに、明かりと言えば向かいの家の前にある街灯だけだ。
その街灯も今時珍しい、木の電柱に傘と電球が付いているだけの物で、まったく心もとない。
近所でこんな古びた街灯はここだけだった。

数年前の話だ。夜9時頃家に向かう一本道を歩いていると、向かいの街灯の下に人がしゃがんでいるのを見かけた。
この一本道は堤防で行き止まり、しかも袋小路になっている為、
近所の人か堤防に用事のある人しか利用しない。誰だろう?と思いながら距離を縮めた。

近くで見るとその人物は知り合いではなかった。
首元ぐらいの長さの髪に地味な服装、中肉中背。
こちらに背を向けている為、男か女かまったく分からない。
片膝を付いて、微動だにせず堤防の暗闇を見つめている。
こっそりと家に入った私は母を呼んで、街灯の下の人物を見せた。
同じ場所で堤防を凝視し続けるその姿は、何かを待っている様にも見える。
怖くなった母は、向かいのM家に「お宅の前に不審者がいる」と連絡を入れた。
驚いたM家の旦那さんが外に出たところ、もう不審者はおらず、街灯の下にサンダルが揃えて置いてあったという。
話は近所に広まり、それからしばらくは皆、川で亡くなった人がいないか新聞記事を注意していた。


結局川で亡くなった人はいなかったが、不審者を見かけてから2ヶ月ほど後、何者かにより街灯の下に花が供えられていた。
白花メインのバスケットアレンジはとても豪華で、到底いたずらで置くレベルの物ではない。
M家では気味悪がって「迷惑になりますので持ち帰って下さい」と張り紙をしたが、一向に無くならない。
結局花が枯れた頃、M家で処分する事になった。
すると数日後にはまた新しい花が供えられている。そんな事が3度繰り返された。

3度目の花を処分した後、犯人は捕まった。
M家の息子さんが早朝に帰宅した際、偶然にも花を供える現場を目撃したのだ。
犯人は小柄で白髪の老女だったという。どうやら私と母が見た人物とは別人らしい。
花を供えた理由を聞いても「ここに娘がいる」と言うばかりで要領を得ない。
それでも根気よく聞き出すと、娘さんは数年前に病死したらしい事、
拝み屋の様な人に「娘さんがこの街灯の下にいる」と言われたらしい事が分かった。
(肝心の、何故この街灯の下なのか?については解明されなかったが。)

老女はどうも認知症を患っているようだったので、M家では大事にはせず
花を供えないよう説得して、そのまま帰したそうだ。
その後この街灯に花が手向けられる事は無くなった。


そして3ヶ月ほど前、行きつけの店の主人からこんな話を聞いた。常連客の体験だという。

その女性はウォーキングが趣味で、堤防が定番コースだった。
ある日歩き始めが遅くなり、折り返し地点に来た頃には日が落ちてしまった。
歩きなれた道とはいえ、夜の堤防を歩くのは怖い。そこで堤防を降りて、住宅街を抜けて帰る事にした。
住宅街に入るとすぐ街灯が見えた。古びた木の街灯だったけれど、明かりがあるだけでほっとしたという。


ここまで聞いて予感がした私は、その街灯の事を詳しく尋ねた。果たしてそれは、件の街灯であった。
実家の向かいにある街灯だと分かり、店主と二人驚く。更に店主が語るところによると…


女性が街灯の下を通り過ぎたその時、急に明かりが揺れ出した。
丁度それは、大きな蛾が群がっているような光の明滅だったという。
振り返ると、街灯の下に何かがぶら下がっている。眩しくて見づらいため一、二歩戻ったが、異様な光景に足を止めた。

ぶら下がっていたのは、麻袋に入った人だった。


頭部は袋から出ているが、長い髪を振り乱して顔は見えない。
その人は街灯が揺れるほど必死にもがいている。反射的に助けなければと思ったが、
先ほど堤防から降りた時には、こんな物を見た覚えがない。
しかしあまりに生々しいので、夢とも現とも判断がつかず、ただただ見上げていたそうだ。

麻袋を下げてあった紐が千切れたのか、地面に人が叩きつけられる音で、女性は我に返った。
自分の2mほど前に落ちているそれは明らかな質量を持つ“この世のもの”にしか見えない。
やはり助けなければ、そう思った女性の目の前で、麻袋からうつ伏せに人が這い出して来た。
その女性は「ぬるり」と表現していたそうだ。とにかく人の動きではなかった、と。
それは一瞬にして女性の足元に到達していた。
2mは離れていたはずなのに、今は女性の爪先に額を預けている。
質量はあるが、この世のものかと問われると…
女性は全速力でその場から逃げ出したそうだ。


今後もあの街灯の下で奇妙な事が起こるのか、楽しみでもあり恐ろしくもある。
とりあえずもう自分は体験したくないので、夜間は近づかないようにしているのだが。
第49話『電話』 葛◆5fF4aBHyEs
自分とヒナ(仮名)とケイ(仮名)の3人で涼を求めて山にドライブに出掛けた
そこは頂上にキャンプ場がある関係で、車で頂上まで登れる
目的はキャンプ場ではなくその手前の小さな沢なのだが

いい年した社会人が真夏の昼日中に3人揃って水遊びというのも切ない
釣り竿も一応持ってきていたが、渓流釣りは早々に諦めていた
しかも鬱蒼と茂った木のせいか、蚊も多い
それでも清涼な水の冷たさが気持ち良かった

ひとしきり涼を満喫してさあ帰ろうかという時、プルルル……とケイの電話が鳴り始めた
「あ、もしもし母ちゃん?」
3人して車に戻りながら、ケイが話している
あ、ここ電波入るんだ。頂上なら入るのは知ってたけど
そう思って自分の携帯を取り出すが、表示は『圏外』になっていた
ケイとはキャリアが違うからかな?もしくは自分のガラケーとケイのスマホで何か違うんだろうか
呑気にそう考える自分と違って、ケイと同じキャリア、同じ機種のヒナが青くなる
「ケイ、電話切って!」
「え?」
ケイが耳元から電話を離した次の瞬間、

『ヒヒヒヒッ』

携帯から不気味な笑い声が響いて、「うわっ」と叫んだケイの手から携帯が落ちる
そのまま誰も動けずに、落ちた携帯をじっと見ていた
やがて意を決したケイが、恐る恐る携帯を拾い上げる
携帯は液晶画面が割れ、電源が落ちていた
3人して押し黙っているせいか、やけに蝉の声が大きく感じられた。暑かった太陽の熱気が、今は重く、ねっとりとまとわりつくようだった
3人して顔を見合わせ、ケイが電源を入れる
……電源が入る一瞬、画面の中に白っぽい人影が見えたのは気のせいだろうか
画面の表示は『圏外』。ケイの着信履歴は、遊びに誘ったヒナからの着信が最後になっていた

逃げるように山を降り、ケイはその足で携帯を変えに行った
今でもたまに3人で遊ぶのだが、誰もあの山には近付こうとしない
第50話『影』 葛◆5fF4aBHyEs
視界の隅をサッと黒い影が横切った気がして顔を上げる
……何の変哲も無い、いつも通りの大学の食堂の風景
向かいでカレーを食べていた友人が、私の様子に気付いて不思議そうに首を傾げる
「どうかした?」
「ううん、別に……」
気のせいか。そう思って私は手元の親子丼に視線を戻した

廊下で友人と話していると、視界の隅を黒い影が走る。正門からふと見上げると、窓のところを何かが通り過ぎる
そんなことが何度かあるうち、私は黒い影が通る時、必ずある男性がその近くに居ることに気が付いた
学年は1コ下らしい。細身だが、背がかなり高く、眼鏡をかけている。交友関係はかなり広いようだ。所属はテニスサークル
……気になるとつい目で追ってしまったせいで、かなり彼に詳しくなってしまった。これじゃまるでストーカーだ

そうこうしているうちに、夏休みに入った
私は里帰りしたこともあって、彼のことなどすっかり忘れていたのだが
夏休み明けに見掛けた彼は、以前とは全く違っていた
……何と表現したらいいのだろう。彼の周囲がぼやけて見える。というより、『ブレて』見える
二重にズレた印刷を見ているような感じで、じっと見ていると酔ったように気分が悪くなる
自分の目がどうかしたんじゃないかと思ったけれど、そんな現象は彼と彼の周囲にしか起きていない

気にはなるけれど、まさか聞くわけにもいかない。そもそも私は彼と親しい訳でもないのだし
……でも気になる
そんな葛藤を続けていたある日、前日に徹夜していて眠かった私は、一日中机に突っ伏して眠っていた
眠っていたといっても半覚醒のような状態で、人のざわめきなどを聞くともなしに聞いていた
そんな中、一つの足音が近づいてくる

ああ、この机の横を通ってるんだな
ぼんやりとそう思った次の瞬間、

「……よく分かったな」

ぼそりと囁くような低い声が聞こえて、ガバッと飛び起きた
その勢いに、隣を歩いていた『彼』が驚く
今のは彼の声によく似ていた……?
彼は私の様子に、不思議そいに首を傾げながら、通り過ぎて行った


数年後、彼が逮捕されたニュースを見た
そこには、『爽やか』で『人当たりもよく』、『朗らか』だった彼とは似ても似つかない罪状が並んでいた
彼を知る人たちは、口を揃えてこう言った
「彼は突然、『まるでとり憑かれたように』人が変わった」、と
だが、私は思うのだ
あれは、『とり憑かれた』のではなく、もしかしたら……

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